フリーランスの子育ては自己責任?制度の壁に直面する現実と乗り越えるためのヒント
キャリア
多様な働き方が広がる現代、自由度の高いフリーランスという働き方を選ぶ人も増えています。しかし、出産や育児のライフイベントを迎えたとき、支援制度の「空白」に直面し、思わぬ困難を抱えるケースが後を絶ちません。特に出産直後の収入不安や、保育施設の利用に必要な「働いている証明」の壁など、正社員とは異なる現実があります。制度が充実する中で、なぜフリーランスは支援から取り残されてしまうのでしょうか。実際の体験談をもとに、その課題と今後の可能性を探ります。
東京都内でフリーの映像ディレクターとして活動する西原裕貴さん(48)は、10年以上にわたりNHKなどから番組制作を請け負いながら、2人の子どもを育ててきました。出産後も仕事を続けてきた西原さんですが、第一子を保育園に預けようとしたときに、思いもよらない壁にぶつかります。
「就労証明書を提出してくださいと言われたんです。でも、私には雇用主がいません。フリーランスは自分で仕事を取ってくるので、誰かに書いてもらう証明書がないんです」
西原さんは、自らが制作した番組のリストや発注書、エンドロールに名前が掲載された画面の写真など、働いていることを証明する資料を集めて提出しました。それでも、役所の反応は曖昧でした。
「スケジュールも直前までわからないのが普通。3カ月分の予定提出を求められても現実的ではないんです。フリーランスの働き方に対する理解が十分ではないと感じました」
さらに困難だったのが経済的な問題です。西原さんの妻もフリーランスで、夫婦ともに雇用保険の対象外。そのため、会社員が受け取れる育児休業給付金や出産手当金の支給を受けることができませんでした。自営業者向けの国民健康保険にも、多くの場合そういった給付制度はなく、「働かなければ収入ゼロ」という現実がのしかかります。
「子どもが熱を出して保育園に預けられないと、代わりに見てもらえる人がいない。運よく撮影現場に行けたけれど、もし当日だったらと思うと背筋が凍る思いです。代わりがいないので、仕事を断れば次の依頼が来ないかもしれない。その緊張感は常にあります」
このような不安定な状況を目の当たりにし、「子どもを持つのをためらう」というフリーランスの声も聞くと言います。たしかにフリーランスは自ら選んだ働き方ではありますが、近年では企業が雇用コストを抑えるためにフリーランスを活用する傾向もあり、個人の選択だけとは言い切れない側面もあります。
現在、正社員女性の出産・育児支援は着実に拡充していますが、社会全体で少子化を食い止めるためには、雇用形態に関係なく子育てを支える仕組みが不可欠です。多様な働き方が当たり前になる中で、「どんな働き方でも子育てしやすい社会」をどう実現していくか。制度の柔軟な見直しや、自治体の現場での理解促進が、今後のカギとなるでしょう。
