午後4時に仕事が終わる国がある デンマークで働く日本人が実感した「時間の使い方」の違い
キャリア
夕方になると、まだ明るい時間帯にもかかわらず、人々が一斉に家路につく国がある。それがデンマークだ。長時間労働が当たり前だった環境から移り住んだ日本人にとって、午後4時台に始まる帰宅ラッシュは強烈なカルチャーショックだったという。
取材で話を聞いたのは、かつて多忙な仕事に追われていた元新聞記者。39歳でデンマークに移住し、現地で働く中で、日本とはまったく異なる「時間の価値観」に出会った。短い労働時間にもかかわらず、デンマークは高い経済力と国際競争力を維持している。この一見すると矛盾しているように見える現実の背景には、独特な時間の考え方があった。
デンマークでは、1日24時間を3つに分けて考える文化が根付いている。働く時間、眠る時間、そしてもう一つが「自分のための時間」だ。仕事が終わった後も、まだ一日の中に十分な余白が残されており、人々は家族と過ごしたり、趣味に打ち込んだり、地域活動に参加したりする。夕方の街では、スポーツ施設やコミュニティスペースに向かう人の姿が当たり前のように見られる。
日本やアメリカで働いていた頃の生活を振り返ると、1日はほぼ「仕事」と「疲れを回復するための休息」だけで構成されていたという。仕事が終われば、残っているエネルギーはほとんどなく、次の日に備えて休むだけ。仕事以外の活動を楽しむ余裕はほとんどなかった。それでも当時は、それがワーク・ライフ・バランスなのだと信じていた。
しかしデンマークでは、仕事以外の時間にこそ人生の重心が置かれている。働くことは生活の一部ではあるが、中心ではない。仕事を終えた後に「もう一つの時間」がしっかり確保されていることで、人々は精神的にも体力的にも余裕を保っているように見える。
この背景にある考え方として知られているのが、1日を「労働・自由・休息」の3つに分ける発想だ。この思想は古くから伝わり、単に労働時間を短くすることよりも、「自由に使える時間」を守ることに価値が置かれてきた。その結果、残業を前提としない働き方が社会全体に浸透していった。
午後4時に仕事を終え、自分の時間を楽しむ。そこには、効率よく働き、人生全体を豊かにしようとするデンマーク流の時間哲学がある。短く働きながらも満足度の高い日常を実現するためのヒントは、私たちが当たり前だと思っている「1日の使い方」を見直すことから始まるのかもしれない。
